Clint Millarから学ぶBMX市場マーケティング

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11月にオーストラリアに遊びに行ったときに古くからの友達でライダーのClint Millarと会った。
Clint Millarは10年以上前からオーストラリアを代表するライダーの1人で、ライダーとして活躍する傍ら自分でBMXメーカーを立上げて経営している、数少ない起業家BMXライダーだ。
Clint Millarのインタビューはここにある。
また、彼にBMXブランドとして海外進出する方法もここに書いてます。

Clintが仕事している倉庫での写真
clintshoeg.jpg

Clint Millarは2007年か、それ以前からBMXパーツブランドのColony BMXをスタートさせ、そこからフレーム、完成車、ニーパットなどと広い商品群を作り、オーストラリアのライダーを中心にすごいライダーで構成されたチームを作って活動している。

これだけでも素晴らしいのだが、Clintは下の2つのBMXブランドを新たに作ってビジネスを広げていた。

  1. Division Brand
  2. Academy BMX

Clintと話をしていると、とても戦略的な動きで関心するばかりだった。
だから、ここで僕の理解を紹介してみたい

まずは、BMX市場はどうなっているのか、
そして、他のBMXメーカーの動き
最後にClintが抱えるブランドを整理してみたい
そんな3ステップで見てみよう


1. BMX市場

BMX市場は、以前と比べてフレームと高級パーツは以前よりも売れなくなっている
その代わり完成車ばかり売れる。
理由としては、主に下の3つの理由があると思う。


  1. リーズナブルでスペックの高い完成車が増えている

  2. 2台目以降のフレームはインターネット経由でアメリカから買うユーザーの増加

  3. パーツ、フレームの品質が高くなり、壊れにくくなっている。だからパーツの買い替えサイクルが伸びている

よって、以前よりも多くのメーカーが完成車を販売するようになり、市場に完成車があふれるようになっている。
そして、さらにフレームなどが売れなくなっているサイクルができているのだと思う。

BMXのハードグッズに加え以前はビデオも販売されていたが、
インターネットでの映像配信が普及し、以前のようにビデオが売れなくなった。
また、映像制作のコストも下がったため映像をネットで配信し、メーカーは映像を効果的なマーケティングツールとして使用している。

結論としては、BMX市場は大きく拡大しておらず、商売がしづらくなっているため
ブレイクスルーする何かが必要だということだ。

2. 競合の動き

以前は完成車を作っているBMXメーカーはとても少なかったが、今は多くのBMXメーカーは完成車を作って販売している。
全メーカーじゃないが、日本での完成車の価格幅を下のグラフにまとめてみた。
完成車の最低価格を基準にして、下のように3つに分類してみた。


  • 1番上の2メーカー(カテゴリー1):BMX老舗メーカーで価格、品質とも低い完成車を提供

  • 2番目の2メーカー(カテゴリー2):新興メーカーで品質をカテゴリー1よりも上げて、価格をカテゴリー3よりも下げている勝負している

  • 3番目の5メーカー(カテゴリー3):品質、ブランドイメージを下げない完成車を提供。最低価格レンジは5万円前後
bmxcompetes.jpg

普通だが、安い価格の完成車は品質は低く、高い自転車は品質が良い。

よって、リーズナブルな価格で高品質な完成車はあり、それをユーザーに理解させることができるば、多くのユーザーに買ってもらえるかもしれない。



3. ブランド・ポートフォリオ

Clint Millarの持つブランドは下の3ブランドだ

  1. Colony BMX
  2. Division Brand
  3. Academy BMX

これらのブランドを下のチャートで分類してみる。
作っている商品を横軸で表す。左からハードグッズ(完成車、フレーム、パーツ)そして、ソフトグッズ(映像、アパレル、パッド)
ざっくりだが価格を縦軸にして、下から価格が低く、上に行くと価格が高くなる。

Clint Millarの持つ3ブランドのポジショニング・チャート
clintbrand.jpg

Colony BMXとDivision Brandは高品質、高価格帯商品でガチでやっているライダーをターゲットにした商品だ。
今のBMX市場の状況では、多く販売することが困難になってきている。

そして、注目するべきブランドはAcademy BMXだ。
Academy BMXは低価格の完成車を中心に販売しているが、他社と同価格の完成車よりも品質がよくて壊れにくい。
だから、オーストラリアの自転車屋の多くはAcademy BMXの低価格と高品質の完成車に驚いている。
そして、取り扱いが増えているという。

ClintがAcademy BMXを始めた1つの理由として、下のことを話してくれた。
オーストラリアのスケートパークにキックボードで遊びにくる子供がたくさんいるという。
キックボードは低価格でスケートパークで遊べるアイテムの1つだ。
キックボードの価格は$300~$400らしい、それを子供の両親が買ってあげている。
スケートパークにキックボードの子供があふれている、現状を何とかしたく、
キックボードと似た価格で高品質なBMXがあれば、親は子供にもっとBMXを買ってあげるのではないかと考えたそうだ。
素敵なソリューションだと思ったね。

2つの視点でまとめると

1. 営業面
低価格商品から高価格帯を持っていることで、最初の取引を低価格商品から始め、ゆくゆく高価格帯の商品も販売できる。
また、市場が好調の時は高価格帯商品も多く売れるだろうし、低価格商品は市場の動向に関わらず販売しやすいと思う。

2. BMXの普及
子供たちがBMXに乗りやすい環境を非常にリーズナブルなBMX完成車を作ることで作っている。
よって、市場の拡大に貢献をしているのだと思う。


最後に

Clint Millarの持つ3ブランドはいいバランスだと思う。
低価格で高品質のAcademy BMXで売上を作り、販売チャネルを広げていく。
そして、広い製品を提供するColony BMXでは、多くの商品ニーズに答える商品を提供し、利益を作っていく。
加えて、立派なブランドイメージも作っていく。
Division Brandはこれからさらに育てていくブランドなのだろうが、かっこいいブランドの方向性と高品質パーツのコンセプトを貫いていくのだろう。
今後、どのように発展していくのかが非常に楽しみだ。

BMXライダーでビジネスマンのClint Millarは、Colony BMXで生計を立ててる。
加えてチームライダーたちにサラリーを支払っている。
さらに、デザイン、日々の業務をこなすスタッフたちを社員として雇っている。
とても立派な経営者のClint Millarを僕はすごく尊敬しているし、よき友達でいてくれていることに深く感謝している。
彼の生き方、人柄がとても素敵だな〜とつくづく思うね。

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